歯の豆知識を紹介しております。
寒い時期が続きますが、皆様お元気に過ごされていますでしょうか。
こんにちは、歯科医師の山田でございます。
今回は唾液についてお話させて頂きます。
皆様は、唾液というとどのようなイメージがあるでしょうか?
唾液、「つば」と言いかえると、少し汚いイメージが先行する方が多いかと思います。
実際問題、口の中には常在菌と呼ぶ、仮に虫歯や歯周病が無い方でも持っている細菌が存在しています。
そのため口から出すつばには細菌が存在し、清潔かどうか問われれば不潔なものという認識になります。
ただし、作られてすぐの唾液は、菌は存在しません。唾液腺と呼ぶ部分で血液を材料として作られる
唾液は、口の中に出てくるまでは無菌的な状態で、とても清潔です。
では、唾液の成分について話を広げます。
唾液は、その大部分は水分ですが、でんぷんを分解して糖を作る唾液アミラーゼなどの消化酵素や、
免疫グロブリンと呼ばれる抗菌作用のあるもの、また様々なイオンを含みます。
このイオンの中で、歯に直接関係するものとしては、例えばできはじめの虫歯の進行を抑えるカルシウム
などや、口の中が酸性(酸っぱい状態)で歯が溶けやすくなっている状態を元に戻す働きのある
重炭酸イオンなどがあります。
また、大部分が水分と書きましたが、これも大きな役割を担っています。歯ぐきは粘膜であり、
湿った状態でないとすぐに傷がついてしまったり、炎症を起こしたりします。唾液の水分で
常に湿潤していることで、歯周病から歯ぐきを守り、また食物をかみ砕いたりするときに
食べ物の流れをスムーズにします。
こんなに良い成分ばかりの唾液ですが、一番よく出てるときがいつか知っていますか?
答えは食事の時です。口の中に刺激が加わると唾液が良く出ます。とくに酸っぱいものは目で見ただけ
でも唾液が出てきます。食事の最初に酢の物を食べるとよいだとか、食前にブラックコーヒーを飲むと
良いと言われたりするのは食事中の唾液量を多くするためです。
では逆に、一番でないときはいつかと言うと、寝てる間です。
唾液を出す唾液腺は、自立神経の支配を受けています。寝ている間というのは、この自律神経の活動が
低下するため、寝ている間は唾液があまり出なくなります。そのため、寝ている間に虫歯や歯周病は
進みやすく、また朝起きた時が最も口の中の環境が悪い状態、すなわち一日の中で最も汚い状態に
なっています。
寝ている間の虫歯や歯周病の進行を抑えるために、寝る前の歯磨きが最も重要と言われているのは
よく知られているのですが、朝起きた直後の口の中が最も汚い状態であるということは
あまり知られていません。
多くの方が朝食前に歯磨きをせずに、起きた直後の口の状態のまま食事を摂られています。
このコラムを読んでいただいた方はぜひ朝起きた直後の歯磨きを習慣づけて頂ければと思います。
(ちなみに、歯磨き剤の種類によっては味の感じ方が変わってしまうものがありますので、
起床直後の歯磨きは水だけで磨かれることをお勧めします。)