歯の豆知識を紹介しております。
こんにちは。歯科衛生士の酒向です。
今回はタバコと歯周病の関係についお話します。
タバコは癌・循環器疾患(心臓病・脳卒中)・呼吸器疾患(肺気腫・喘息)などの多くの病気の原因であることはよく知られています。一方でタバコの煙の入口となる消化器としての口腔、特に歯ぐきを含めた歯周組織は、直接その影響を受けることになります。
タバコには4000種以上の化学物質が含まれており、そのうち有害物質は200種類以上にものぼります。また、有害物質のうち40~60種類が発がん性物質であることもわかっています。
特に、タバコの三大有害物質と言われているのが「一酸化炭素」「ニコチン」「タール」の3つです。
1一酸化炭素
タバコの煙のうち、1~3%は一酸化炭素が含まれています。一酸化炭素は、酸素不足の環境下で不完全燃焼を起こすと発生する気体です。
一酸化炭素は血液中のヘモグロビン(赤血球)と結合しやすい特徴を持っており、その結合のしやすさは酸素の200倍以上です。
ヘモグロビンは酸素と結合することで全身に酸素を運搬しています。ところが、一酸化炭素が発生し続けると酸素がヘモグロビンと結合できないため、身体が酸素不足に陥ります。これを一酸化炭素中毒といいます。
2ニコチン
ニコチンは一種の神経毒で、血管を縮ませるので、体が酸欠・栄養不足状態になります。ニコチンは体を守る免疫の機能も狂わせますので、病気に対する抵抗力が落ちたりアレルギーが出やすくなります。更に傷を治そうと組織を作ってくれる細胞(線維芽細胞といいます)の働きまで抑えてしまうので、手術後も治りにくくなります。
3、タール
タールは一酸化炭素などの気体を除く粒子状の成分で、ヤニとも呼ばれます。煙草を吸うと歯の表面などに黒い汚れが付着するのは、このタールが原因です。
タールには有害物質や発がん性物質が多量に含まれています。無数の化合物の集まりであることから化学的に安定しておらず、生体物質などと化学反応を起こすことで身体に悪影響を及ぼすリスクがあります。
タバコが歯周病によくない理由
一酸化炭素には身体の酸素不足を引き起こす作用、ニコチンには血管を収縮させる作用があります。 タバコを吸うと、これらの作用により歯ぐきの中の血流は悪化します。血流が悪くなると歯周組織に栄養分や酸素がしっかり届けられなくなり、抵抗力が低下するため、歯周病の発症リスクを高めてしまうのです。 また、血流の悪化により歯ぐきの修復機能が低下することから、歯周病の治りを遅くする可能性もあります。
喫煙者は歯周病を自覚しにくい
喫煙は歯周組織の血流を悪くします。その結果、歯ぐきからの出血が少なくなるために、歯周病の発症・進行に気付くのが遅れてしまうリスクがあります。
タバコはインプラントの歯周病にも影響します
失った歯を補う方法としてインプラントが挙げられますが、タバコはインプラント治療のリスクファクターでもあります。
これは、タバコに含まれる一酸化炭素やニコチンの作用により、オッセオインテグレーション(インプラント体と骨の結合)が妨げられることや、インプラント周囲炎を引き起こす可能性があるためです。
インプラント周囲炎とは普通の歯と同じ細菌(歯周病菌)が原因で発症する、いわばインプラントの歯周病のことです。インプラント周囲炎が進行すると最悪インプラントを摘出しなければならなくなることもあるため、インプラント治療の前には必ず歯周病治療を行う必要があります。
タバコによる悪影響は吸っている本人だけに及ぶものだと思われがちですが、たとえ非喫煙者であっても、受動喫煙によって歯周病のリスクが高まることが明らかとなっているのです。
喫煙者の方の中には、「禁煙したからといって歯周病が治るわけではないのでは?」と考えている方もいらっしゃるかもしれません。
しかし、複数の研究報告により、歯科治療とともに禁煙を進めていくことで、歯周組織へのダメージが抑えられることが明らかとなっています。
歯の健康維持、特に歯周病の完治を目指すのであれば、禁煙は必須事項です。
タバコは口にとって百害あって一利なしといえます。
お口の健康を気にするならば一日も早く禁煙に取り組みましょう!